『ルドルフ・シュタイナー希望のある読書』2022年12月21日(水)80回2022年12月21日

 R・シュタイナー著『神智学』(高橋巌訳、ちくま学芸文庫)を読み始めています。
 四大主著の一つである前回読書の『自由の哲学』に続き、今回もその一つである『神智学』を読んでいきます。
 目次は以下のようになっています。

第三版のまえがき 9
第六版のまえがき 15
第九版のまえがき 17
この書の新版のために 19
序論 21
人間の本質 29
一 人間の体の本性 35
二 人間の魂の本性 38
三 人間の霊の本性 40
四 体、魂、霊 42
霊の再生と運命 71
三つの世界 103
 一 魂の世界 103
 二 魂の世界における死後の魂 121
 三 霊界 136
四 死後の霊界のおける霊 146
五 物質界、並びに魂界、霊界とこの物質界との結びつき 164
六 思考形態と人間のオーラ 177
認識の小道 191
補遺 219
付録 233
訳者の解説とあとがき 251
文庫版のための訳者あとがき 261

神智学――超感覚的世界の認識と人間の本質への導き

 上記の目次に沿って読書を進めます。
 今回は、第三版のまえがき、第六版のまえがき、第九版のまえがき、この書の新版のために、9~20ページを読みます。
 そして今回の読書で私の心に強く触れ、重要だと思った文章を下記に抜粋させて頂きました。「第三版まえがき」中の10ページ7行目~13ページ3行目の文章です。

 「著者は、霊的分野で自分が経験し、証言できた事柄だけを述べている。この意味で自分の体験した事だけが表現されるべきなのである。
 本書は今日一般に行われているような読書の仕方で読まれるようには、書かれていない。どの頁も、個々の文章が読者自身の精神的作業によって読み解かれるのを待っている。意識的にそう書かれている。なぜなら、この本はそうしてこそはじめて、読者のものとなることができるからである。ただ通読するだけの読者は、本書を全然読まなかったに等しい。その真実の内容は、体験されなければならない。霊学はこの意味においてのみ、価値をもつ。
 通常の科学の立場から本書を評価する場合、その評価の観点は、本書そのものから得られているのでなければならない。批評家がこのような観点に立つときは、勿論本書の論述が真の科学性と矛盾するものではないことを理解するだろう。著者は一言なりとも自分の学問的良心に反するようなことを述べようとはしていない。
 別の道を通って、ここに述べた諸事実を求めようと思うなら、私の『自由の哲学』の中にそのような道が見出せる。本書と『自由の哲学』とは、異なる仕方で、同一の目標を目ざしている。その一方を理解するのに他方を必要とすることはないにしても、或る人々にとって、両方の道を通ることは極めて有益な筈である。
 本書の中に「究極の」真理を求める人は、おそらく満足せずにおわるだろう。霊学の全領域の基本的事実のみがまず述べられているからである。
 宇宙のはじめとおわり、存在の目的、神の本質をすぐに問おうとすることは、確かに人間の本性に基づいている。しかし悟性のための言葉や概念よりも、人生のための真の認識の方を大切にする人なら、霊的認識の基本を扱う書物の中では、叡智の高次の段階に属する事柄を語れない理由が分るであろう。事実、基本を理解することによってはじめて、高次の問題提出の仕方が明らかになるのである。本書に続く第二の書である著書の『神秘学』(一九一〇年に出版された『神秘学概論』のこと――訳者)の中に、ここで扱われた領域に関する、より以上の叙述がある。
 第二版のまえがきでは補足的に次のことが付言された。――今日、超感覚的諸事実の表
現を行う人は、二つの点をはっきり知っておく必要がある。第一の、われわれの時代が超感覚的認識の育成に必要としていること、しかし第二に、今日の精神生活の中には、このような表現を、まさにとりとめのない幻想、夢想であると思わせる考え方、感じ方が充満していることである。現代が超感覚的認識を必要としているのは、通常の仕方で人が世界と人生を経験する場合、その経験内容がその人の中に、超感覚的真実を通してしか答えることのできぬ無数の問題を喚び起すからである。人が存在の基礎について今日の精神潮流の内部で学べることは、より深く感じとる魂にとっては、世界と人生の大きな謎に対する解答ではなく、問いでしかない。しばらくの間は、「厳密な科学的事実が教えること」や現代の何人かの思想家の所説の中に、存在の謎を解決してくれるものがあると信じることができるかもしれない。しかし魂が、自分自身を本当に理解しはじめるときに入って行かねばならぬ、あの深層にまで入っていくなら、はじめ解決のように見えたものが、真の問題のための問題提起に過ぎなかったように思われてくる。
 この問題への解答は、人間の単なる好奇心に応じるべきではない。魂のいとなみの充実と内的平静がまさにこの解答如何にかかっているのだから。そして努力してこの解答を見出すことは、知的衝動を満足させるだけでなく、仕事に有能な、人生の課題に対処しうる人間を作る。この問題が解けぬ場合は、魂だけでなく、結局は肉体をも萎えさせる。超感覚的存在の認識は、単なる理論的要求にとってだけでなく、実生活にとっても有意義なのである。だから現在の精神生活の在り方の故にこそ、霊的認識はわれわれの時代にとって不可欠な認識領域なのである。」

 けれども、シュタイナーの重要な言葉は、上記抜粋させていただいた「第三版のまえがき」の個所だけではない。「第三版のまえがき」の他の個所、「第六版のまえがき」、「第九版のまえがき」、「この書の新版のために」、の中に大切な言葉、表現があります。
皆さま是非この書を手に取り読み進めていただきたいと思います。