飯舘村除染作業日記2015年7月1日第2部84日目2015年07月01日

雨の為休み

 福島県の今日は雨である。。出勤の準備は終えていたが、私が行う予定の昨日に続き同じ仕事のフレコン作成作業は中止となった。雨に濡れた状態では剥ぎ土のフレコン作成は困難である。寮室で情報の整理をしたり、新聞や読書して過ごした。

 6月12日福島民報を開いて見た。
 誇れる福島の実現。内堀知事インタビューである。「ふくしまをつくる」は、手腕評価の高い知事の復興を目指す具体的なメッセージである。東日本大震災と福島原発事故から4年3か月。今尚2重の災害で苦しんでいる避難生活下の多くの県民を含めて、共に新しきフクシマをめざす骨子である。
 
 「復興 安定的確実な財源確保」
 官僚出身の知事らしい現実的な復興財源の被災者に寄り添った対策を出しています。福島県ホームページから、震災・復興ー復興計画・政府要望ー国への政策提案・要望、 平成27年度•ふくしまの復興・創生に向けた提案・要望(平成27年6月12日)が参考になります。
 http://www.pref.fukushima.lg.jp/
 
 「産業 ロボット開発集積地に」
 浜通りをロボットや廃炉研究開発の最先端地域とする福島国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想の具体化を、福島復興再生特措法改正に盛り込まれる。ロボットバレーフクシマの実現へ。医療機器、再生可能エネルギーの取り組みなど原発廃炉後のエネルギー産業へ着手。

 「農業 担い手育成の機能強化」
 農業は福島県の基幹産業。農地除染やコメの全量全袋検査、農産物の安全確保の取り組みを強化する。福島の食と観光を元気にする担い手を育てる。世界各国からの支援に感謝。復興大使で福島を伝えていく。
 
 「高齢者いきいき 地域包括ケアシステム構築」
 介護、医療、予防、生活支援、住まいの五つのサービス。市町村などのモデル事業補助金交付を開始。
 
 「新産業の創出」
 医療関連産業集積は福島県一大プロジェクト。研究開発から医療産業への新規参入、医工連携、人材育成、販路拡大、海外展開を福島県が支援する。工場新設・増設を申請した医療関連企業は、平成23年度4件、24年度14件、25年度18件、26年度16件。合計52件。このうち県外企業の立地は11件。新規雇用人数は1427人。このうち県外企業の立地による雇用は262人。
 飯舘村にある菊池製作所は時計や部品製造し、震災前震災後も継続して生産が続いている。
 
 「農業再生」
 県産品の安全性発信。福島県は販売強化へ事業展開。農業の再生に向けて「チャンレンジふくしま農林水産物販売強化事業」を展開中。六次化商品(加工食品)の開発と購入促進。がんばろう ふくしま!応援店事業に約2000店が参加。

 「ふくしま復興大使」
 再生への歩みを伝える情報発信。国内外派遣を継続。ロンドン、ニューヨーク、パリで展開。北海道や九州をはじめ、全都道府県に派遣。
 
 「ふくしま未来応援団」
 全国の中学生、高校生を招き、復興に向けて動いている福島県の姿を直接見て、理解を深めてもらう企画。復興特別大使を委嘱。
 
 「避難者の推移」
 平成24年6月避難者16万4218人(県外6万2038人、県内10万2180人)。25年6月15万488人(県外5万3960人、県内9万6386人)。26年6月12万6889人(県外4万5279人、県内8万1560人)。27年3月11万6284人(県外4万6902人、県内6万9351人)。

 「市町村除染の住宅除染進捗率」
 平成24年5月0.5%(2062戸)。25年3月4.3%(1万8608戸)。26年3月26.6%(11万4636戸)。27年52.4%(43万757戸)。国が財政支援する「汚染状況重点調査地域」は39市町村が指定。

 「福島県の人口推移」
 平成22年10月203万人。23年10月199万人。24年10月196万人。25年10月195万人。26年10月194万人。27年3月193万人。

 寮のある三春町の天気は雨が降ったり止んだり。午後1時頃には日が射したりもした。夕方は雨は上がり、雲の切れ間から青空が見えた。明日の天気は雨は無さそうである。18時過ぎ食堂で夕食を食べていると、一部出勤組のマイクロバスが到着した。

飯舘村除染作業日記2015年7月2日第2部85日目2015年07月02日

やりがいのある仕事

 除染作業あるいは除染作業員という職種は人気があるようです。放射能を除去する為に行う数々の仕事です。だから放射線被ばくのリスクを負っています。それ故に賃金が他の土木作業よりも高いのです。そして除染作業は福島県の復興復旧に貢献できるという遣り甲斐のある仕事でも有ります。そのような理由かどうかわかりませんけれど、今除染作業へ応募する人が多いと聞きました。除染作業員を求める人々の宿泊施設が見つからないほど希望者いる。
 東日本大震災、福島第一原発事故により平成24年6月の時点で福島県の16万4218人が避難生活を余儀なくされています。平成27年今年3月では11万6284人の避難者が放射能汚染の故郷を離れて暮らし続けています。
 福島県の自然を取り戻す。そして、原発避難生活者が早く安心して帰れる原発事故前の状態に戻していく。除染作業を丁寧にしっかり行って、安心できる大地を取り戻す。除染作業は意義ある遣り甲斐のある仕事なのです。

 平成27年6月12日、「ふくしまの復興・創生に向けた提案・要望」を福島県(内堀雅雄知事)は国へ提出しました。その文章の13ページに「13除染の推進について」の(3)除染事業者の安定的確保には、「除染を着実に進めるために必要な除染事業者及び作業員を安定的に確保するための措置を講じること。」とあります。
 福島県のこのような姿勢は、除染事業者及び除染作業員にとっては、非常に遣り甲斐のある言葉でもあります。除染作業をがんばろうという気持ちに繋がります。
 そして、福島県の復興・創生なくして日本の健全な発展進歩は有りません。

 今日は蒸し暑い日に成りました。農地剥ぎ土のフレコン作成作業です。遣り甲斐のある仕事です。4人1チームでフレコン作りです。
 バックフォー・オペレーターKさんは真言密教の求道者でもあります。聞くと般若心経、観音経、大日経、そして理趣経を読みこんでいる。私も仏教経典に魅かれている一人です。理趣経は性の清浄性を賛美している経典です。ユニークで魅力溢れる内容を秘めています。
 玉掛けのHさんとは昨年来共に除染作業に就いてきました。私と同年齢、共に元気で頑張っています。同じく、もう一人の玉掛者のSさんは相馬市から通っています。Sさんのフレコンスタンドへフレコンバックをセットする方法は非常に遣り易い。セットする前に内袋と外袋を分離する。外袋をフレコンスタンドへ先ずセットする。それから内袋のビニール袋を外袋に入れてセットします。今までのフレコンセット方法で一番遣り易い。
 今日の空間線量2.18μSv/h。私の被ばく線量0.007mSv/8h。

飯舘村除染作業日記2015年7月3日第2部86日目2015年07月03日

山林除染

 今日は山林除染業務に就く。Y建設が受諾した小宮地区中屋敷の山林が現場である。G工業のY職長とM班長を中心に、福島県地元A社、北海道のM社、そしてG社から除染作業員が出て、第2次下請混合チーム20人ほどで作業する。
 農地から20mほどの距離。小さな谷川と農地に沿って50mほど作業した。45度からの勾配が有り、命綱を張り、安全ベルト着用し作業する。仮払い、ノコギリによる雑木や低灌木伐採、その搬出作業を行った。Y職長が勾配のある斜面の低灌木を仮払いする。その切り開かれた後、ノコギリでやや太めの雑木を切り出す。その切り倒された雑木や灌木を下方へ落していく。
 急勾配の山林業務は歩き回るだけでも汗が多い。私は、ノコギリで雑木を切り倒し、下方へ落とし、裾野の小川の流れの向こうの農地へ向けて雑木や低灌木を出していく。午前中だけで汗が全身に漲り作業着まで滲透した。
 7月1週は全国安全週間。早昼食を済ませて、JV集会室でY建設安全大会に除染作業員200名ほど集まる。昭和3年に初めて全国安全週間が実施されて、今年で88回の開催となる。そのような話も披露された。話し手には飯舘村JV除染事業所長のS氏も参加。これから向かえる暑い夏。そこに向けて熱中症対策を含めて安全対策への意識の喚起と啓蒙がテーマであった。参加者全員にタオルが配られた。

 午後も引き続き、山林業務である。やりがいのある除染作業であるが、疲れた。中屋敷山林地区の今日の平均放射線量0.69μSv/h。私の今日の被ばく数値は0.012μSv/8h。

飯舘村除染作業日記2015年7月4日第2部87日目2015年07月04日

除染景気

 今日の朝礼は昨夜の雨上がりで土の広場がぬかる為、砂利の敷いてあるJV現場事務所前広場で行う。広場上手に植えてあるクリの花の終わりの時期がラジオ体操時に目に付く。昨日の朝礼でJVのFさんの話で小宮地区の除染作業者が380人ほどに増えていること。やはり昨日昼後のY建設安全衛生大会でJVの除染事業所長Sさんの話。飯舘村に入っている除染作業員は現在5000人ほどゐるという。
 山林の仕事は汗で下着は濡れて、作業着は泥に汚れ、安全長靴は腐蝕土や葉っぱが入り込み作業用白靴下が泥まみれとなる。けれども木々の自然が生み出す空気は放射線こそ心配無ければ清々しく新鮮である。鳥の声、谷川の水の流れる音、風の囁きに満ちている。
 今日は午前中は小雨が降ったり止んだりした。昨日の続き作業をした。急勾配の山林を切り出した灌木や雑木を下方へ落した。昨日と同じ人数20名ほどで作業をした。山の斜面は水分を含み滑り易く、午後からの作業は近くの平地林の除染作業に変更した。雑木の間伐、その移動、仮払い、集草を行った。

 帰りのバス中で臨席のKさんと除染作業員が落すお金、福島の除染景気の話。除染作業員の購入する品物の傾向。それらの品ぞろえする店舗の話。などなどを交わした。kさんは「今のフクシマは除染バブルだという」。
 例えば飯舘村除染作業員5000人が福島県に落とすお金は? 食費・雑貨等々1日2000円とみると5000人×2000円×365日=36億5000万円。さらに日曜日などまとめ買いをする。さらに、レジャーや遊行費がある。
 福島県全体の除染作業員はその4倍の2万人ほどか。そうすると1日一人2000円使うと146億円。まさに福島県の除染現場で働く除染作業員が落すお金は以外と多い。
 G社やA社では月初めの4日から6日ごろ給料が出る。皆さんコンビニでおろして使う。是非ギャンブルやパチンコに使いすぎ無いように。

飯舘村除染作業日記2015年7月5日第2部88日目2015年07月05日

復興・除染情報の入手

 今日は日曜日。三春寮同室のO氏は同じ沖縄県出身仲間に会いに出かけていった。午前中、同僚5人で自動車で郡山市で行く。昼食・夕食材料などの買い物。いつもは田村市船引町に行っていたが、淀橋カメラに行く者がいるので郡山行きになった。郡山市は大きい。
 郡山市の人口は329,122人で福島県第1位。第2位はいわき市326,122人。第3位が福島市283,201人(平成27年1月1日 福島県ホームページ)。
 
 福島第一原発事故に対する復興や除染情報の今を知る為に私は新聞情報にウェイトをおいてきた。
 先ず「福島民報」である。この新聞をコンビニや駅の売店で購入してきた。福島駅西口駅にある福島民報社6F販売部に行き、古い日付の新聞を購入したこともある。福島民友も購入し読んだ。
 けれども今年度はインターネットでの情報入手が増えている。
  http://www.minpo.jp/ (福島民報)
 http://www.minyu-net.com/ (福島民友)
 
 一つは「福島県ホームページ」。ここには「震災・復興」ページがある。そして、「ふくしまの復興・創生に向けた提案・要望」、「福島復興再生特別措置法・施行令・施行規則」「除染・放射線対策情報」などの重要な文書を閲覧できる。
 http://www.pref.fukushima.lg.jp/

 二つは「飯舘村ホームページ」。先ずは月1回発行「広報いいたて」がお勧めである。その中の「こころのぽけっと」菅野典雄村長の文章が良い。6月は「もう1つのむらの復興 明るい自分づくり」が面白い。避難関係情報をみると最新の県外避難者数、県内避難者数がわかる。
 http://www.vill.iitate.fukushima.jp/saigai/

 三つは「除染情報プラザ」である。除染活動レポートには「川俣町 米の出荷へ向けて 山木屋地区で5年ぶりに営農再開」とある。「除染についての基礎知識」などもあり、除染作業員を志す者も現在の除染作業員も目を入れるよい。ここは、実際足を運んで見聞して来るのが良い。パンフレットやチラシ案内を入手することが出来る。
 http://josen.env.go.jp/

 四つは「環境省ホームページ」。「東日本大震災への対応」ページ。放射性物質対策ページには放射性物質汚染対処特措法及び関連情報が閲覧できる。中間貯蔵施設関連サイトにリンクがはられている。
 http://www.env.go.jp/

 五つは「復興省ホームページ」。「復興に向けた取り組み」一覧がある。もちろん「福島の復興と再生」ページがある。
 http://www.reconstruction.go.jp/

 今日の午後はもっぱら上記ページを閲覧してすごした。除染作業に就いている日常でじっくりインターネット閲覧の余裕が無い。今日の日曜日に感謝である。

飯舘村除染作業日記2015年7月6日第2部89日目2015年07月06日

山林業務から急遽玉掛けへ

 今日は森林の仕事に就こうとしていると、急遽、玉掛け作業へ変更になった。予定していた玉掛け作業者が休みとなっていたようだ。
 このようなケースは日常起こり得ることで、第2次下請けG社作業員メンバー内での融通を効かせることでもある。第1次下請け事業者のY建設の作業計画のもと、第2次下請け事業者が作業コミュニティを形成する。そのコミュニティ内で日々の作業体制をベストな人事配置に持っていく。G社職長の皆さんが朝のベスト配置を急遽形成していく。資格所有の有無はどうか。資格が有っても実際重機を操作出来るのか。除染作業員の経験・熟練度を見ながら、最良の人事体制を組むのに日々神経を使うようだ。
 
 朝礼で、JV小宮地区除染責任者F氏が宮本武蔵の「五輪書(地・水・火・風・空の五巻)」の空について触れる。空とはとらわれない心の事。自分の心理の微妙な変化を含めて、環境の変化に気付く心をきたえること。平常心の大切さを語ってくれた。気付きや平常心を保てれば、事故を回避出来る。争いも無くなる。そのように受け止めた。
 建設業界や除染作業の現場には様々な経験や人生をおくってきた人々が多い。様々な意見を持ち、様々な感性の持ち主がいる。JV担当者にはこれらのツワモノと接してきて、鍛えられた人間性の持ち主が多い。柔軟で面白い人がいる。F氏もそのひとりであると思った。

 今日の玉掛け作業は農地剥ぎ土のフレコン詰め作業である。バックフォー・オペレーターは密教の求道者でもあるKさん。合図者は二本松から来ているHさん。もう1人の玉掛者の同寮3FのMさんと共に仕事をする。85袋のフレコンを作成。オペレーターKさんはフレコン1袋を1.5tほど詰める。1.3t詰めが多い中で、その分丁寧な作業になる。1袋当たりの時間が多くなる。几帳面な性格の持ち主なのだろう。

飯舘村除染作業日記2015年7月7日第2部90日目2015年07月07日

フレコン作り

 昨日に続き、今日も農地剥ぎ土のフレコン詰め作業に就いた。私の仕事は玉掛け業務である。メンバー4人も昨日同様である。場所は小宮地区クツワ掛。県道31号沿いの農地である。
 フレコン詰め作業は、4つ一組のフレコンスタンドに先ず黒色の外袋をセットする。次に内袋の厚手のビニール袋セットする。セットしている時は、もう一組の4つのフレコンスタンドにバックフォー・オペレータが詰め作業を行っている。バックフォーが動いている時は、合図者が紅白の旗を持ち、白旗を出している。合図者がいなければ、バックフォーは動かすことは出来ない。除染作業は安全性が優先されている。
 フレコンのセット作業は玉掛者2人で行う。一組4つのフレコンスタンドにセットする。二組ある。バックフォー・オペレータが一組のセットされたフレコンに詰め終わると、合図者は赤旗でバックフォーを停止させる。それから玉掛者2人と合図者で、剥ぎ土が詰め込まれたフレコンからフレコンスタンドを外していく。バックフォー・オペレターも手伝いに入る。次に、剥ぎ土が詰められたフレコンに移動である。バックフォーのクレーン機能を使い移動である。バックフォーのフックに2本ワイヤーロープが取り付けられ、そのワイヤーロープのフックにフレコンの吊輪2つを引っ掛ける。引っ掛ける玉掛者を私が勤めた。移動先で外す玉掛け者はM氏。合図者はH氏。バックフォー・オペレターはK氏。昨日のメンバーと共に頑張りました。
 その繰り返し動作でフレコン作成をしていく。
 フレコン作成作業は除染作業工程の重要なポイントである。放射能汚染土である農地の表面を剥ぎ取った土塊を詰めていく。
 工程の概略を示すと、フレコンスタンドへフレコンセット→バックフォーで詰める作業→フレコンを外す作業→フレコン移動作業。
 この繰り返し作業がフレコン作成基本作業である。同じ動作の繰り返しである。バックフォーで詰める作業の速さと正確性に合わせた仕事でもある。今日は汗をかいた。疲れた。

飯舘村除染作業日記2015年7月8日第2部91日目2015年07月08日

黒犬

 午後2時頃から雨になった。ざっーと降る雨では無かったが、小雨より強い雨になった。カッパは常にほとんどの除染作業員は持参しているが、今の季節は途中からの雨に対して、カッパやヤッケに着替える人が少ない。既に午後の時間では汗まみれでアンダーシャツは濡れているしパンツも同様である。だから、今さらカッパに着替える人が少ない。そして、今の夏の季節はカッパを着るとむし暑くなり、さらに汗まみれ状態になる。雨に打たれて濡れるか。汗まみれを助長するか。結局、どちらかの選択なのだ。
 そのような訳で、玉掛者2人と合図者1人はよく濡れた。
 帰りのマイクロバス中では寒さに震えていた。三春寮に帰ったら、洗濯とシャワーを先ず優先しよう。最も、いつもそのように動いてはいる。

 帰りのマイクロバス中で、飯舘村前田・八和木地区を放浪していた黒色の犬が小宮地区にも来ていたと「お父さん」と皆から親しまれているMさんが話した。餌はと聞くと、皆から可愛がられているので、誰かしら何か食べものを与えているのだろうとMさんは言った。僕もその黒犬を見たことがると思った。住民が全員避難生活をせざる終えない飯舘村では、犬・猫をはじめとして、多くの家畜が悲劇をむかえた。飯舘村を彷徨う黒犬も家族と別れて侘しい状況に置かれていたのだ。
 けれども黒犬は、無味乾燥に陥りがちな除染作業の日常に、癒しと潤いを人々に与えてくれている。MさんとKさんの話を聞きながら、黒犬の存在があったかい物語を与えてくれた。
 Mさんはフレコン運搬を受け持っている。ダンプカーの運転は安定して、うまい。60歳を超えているが、背筋が伸びていてすらっとしている。目が大きく顔立ちが凛々しい。Kさんは言葉が次々湧いてくる話題提供者である。2人は三春寮3Fで同室である。

 原発事故は飯舘村の3・4世代同居の大きい家から離散した家族が多い。バラバラの避難生活がもたらされただけでは無い。黒犬のような家族同様のペットや家畜が困難な生活を余儀なくされた。
 除染作業帰りのバス中から「がんばって下さい!」と祈る。

飯舘村除染作業日記2015年7月9日第2部92日目2015年07月09日

除染作業の厳しさ

 除染作業の一つひとつの仕事は他の土木作業に較べて特にハードな仕事と言うことはない。放射能汚染のリスクをかかえている仕事ではあるが、体力的に頭脳的に他の土木作業と同じである。むしろ除染作業の現場では無理な労働作業をさせない。労働災害を出さない措置を取っている。JV担当者は例えば熱中症対策には小まめな水分補給を取るように呼び掛けている。各職場の判断で休息を取る様に朝礼で話す。WBGT値(熱中症指数)を朝礼時に上げて、注意を喚起する。無理な労働作業をいましめているのがJV担当者のスタンスである。
 けれども「除染作業の厳しさ」を、今日改めて認識させられた事例がある。
 それは出勤時の対応にあった。同僚が線量計と身分証明カードを忘れてきた。除染作業時は線量計も身分証明カードも身に付けて仕事することが義務付けられている。同僚は早朝1時間以上かけてマイクロバスで出勤したにも関わらず仕事に就くことは出来ない。朝礼時、指先呼称で線量計も身分証明カードも確認し合う。
 それだけでは無い。腕章、トラチョッキ、作業着、長袖シャツ、ヘルメット、マスク、安全長靴、手袋等装備しないと除染作業に就くことはできない。刈払い作業などはゴーグル必須着用である。また技能講習証、特別教育修了証を運転免許と同様に携帯していないとそれに関わる仕事に就けない。もし不携帯で仕事しているところを見つかった場合、即刻退場になる。
 線量計も身分証明カードを寮に忘れた同僚は帰寮した。帰寮するにも足が無い。たまたまG社S部長が来ており、郡山市の事務所へ帰る車に、三春寮までのせてもらうことができた。
 同僚の欠勤で予定していた作業計画が大幅にくるった。同僚は玉掛け作業に就く指示が出ていたが、仕事に就けない。その他に玉掛け資格証のある人材が見当たらず、機械集草、フレコン作りの仕事が中止となる。
 そのような意味で除染作業の日々の仕事を成立させるには、着用しなければならない幾つかの装備品がある。その不携帯は許されないのである。そのように、作業人事は日々の変化の有る中で決めて行かねばならないので、職長業務の大変さが解る。
 除染作業の厳しさは装備品を忘れた時に心身もって体感できる。線量の高い特別地域の除染作業は環境省管理の仕事であり、1mSv/年間を超える地域の除染作業は市町村管理の仕事である。どちらも公共事業である。それ故に国民の目線にわかる除染装備が必要となる。そのように受け止めている。

飯舘村除染作業日記2015年7月10日第2部93日目2015年07月10日

道路清掃

 農地剥ぎ土一山のフレコン詰めを終了。午後3時の休憩後から重機(バックフォー)の移動である。バックフォーを移動して次の除染現場に向かう。小宮地区山辺沢内の移動であるが県道31号を飯樋方面に300mほど利用する。バックフォー・オペレーターKさんの運転操作。バックフォーの先頭に立ち、誘導及び交通整理役は合図者のOさん。バックフォーの後につき交通整理をするのは玉掛者のMさん。バックフォーのゴムクローラーや車体下部に付着した泥が道路に落ちるので、清掃役を私が行う。
 ゴムクローラーは自動車のタイヤと同じ役割を果たす。自動車のゴム製タイヤと同様に道路の路面を傷つける事は無い。
  
 バックフォーを道路へ出す前に農地で、左右のクローラーを片方づつ空中に浮かし空回転させて泥を落とし、なおかつスコップや箒を使い、バックフォー車体の泥落としをする。それでも、道路を走ると泥が路面に落ちる。その掃除をするのである。放射能が多少なりとも不着した泥を道路に落としておくわけには行かない。その泥を一般車が踏んで、タイヤに付着した場合、放射能の拡散につながる恐れがある。そのようなわけで、JVや第1次下請事業者Y建設は道路清掃を義務付けている。泥で道路を汚した状態ではいけない。だから道路の汚れに気を使う。
 バックフォー以外のフレコンスタンド、露面下敷き用の長方形畳ほどの重いゴムのようなプレート2枚、フレコン8個は軽トラックで同寮のTさんSさんコンビの資材管理係に移動のお願いを、グループリーダーのKさんがしてある。
明日から新たな農地での剥ぎ土のフレコン詰め作業が待っている。作業準備をして、バックフォーをカラーコーンとバーで囲む。今日の作業終了である。今日の天気は1日晴れて、そよ風がある。暑かったがしのぎやすかった。今日の労働、除染作業を皆さんお疲れ様でした。